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ジュースを驕ってほしいだけだって。通りかかったという理由のみで見ず知らずの僕にお願いするなんて、どうにも自分勝手で奇妙奇天烈な天才特有の発想だな。やっぱり、沙理りんは天才。
しかしながら本当にそれだけなの。
下心はないの。
「信じられない? ユーはどっちかと言うとスケェプティカル(疑い深い)な人?」
へっ?
スケェプティカルなんて英語聞いた時もないですぞ。まあ、前後の会話からおおよその見当はつくけどさ。多分、疑い深いってところだろう。正確には分からないけど。
「ヘンテコな英語」
僕がジト目で見つめる。
「ああ。これはミィなりのマイ的英語だよ。まあ、一種の個性だとでもアイ・シンク(思ってよ)。そそ。そんな事よりジュースを驕ってよ。ミィらはフレンズでしょ。オッケ?」
いやいや、僕らは友達になった覚えないから。
むしろ天才は大嫌いだから。
なに言っての。
君。
「ミィは只今絶賛財布を落としちゃって中でマネーがナッシング。だから驕ってちょ」
とういうか、なにこの軽薄を通り越したテンポのいいノリの軽さ。
というか、驕る義理ないから。
スルーしたい。
正直。
僕はまたジト目で見てから言葉を失って呆然と立ち尽くしてしまった。ほとほと天才とは理解不能でまったく自分とは合わないのだと改めて再認識していた。
そんな僕を尻目に彼女は満面の笑みで、見つめ続けていた。
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