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…――僕は彼女の財布を探す事にした。
無論、知り合いでもなんでもない彼女に、ただジュースを驕るのは嫌だったので間を取って一緒に探そうと提案したのだ。彼女は快諾した。むしろ僕らは一緒に財布を探すべきだと考えていた節もあった。しかも曰く、見つけてくれたら一割を謝礼としてくれるという。
僕の両親はいわゆるお金持ち。
しかし、実のところもらっている小遣いは少ない。
ケチなのだ。
加えて今月は欲しいゲームを買ったので、すでにピンチを迎えており、謝礼の一割がいくらもらえるのか分からないが渡りに船でもあった。逆に感謝したいとさえ思った。しかしこのあと感謝などと甘い考えであった自分を笑ってしまうのだが。
とにかく僕らは財布探しを始めた。
彼女が歩いてきた道を注意深く確認しながら戻ってみる。側溝の中や植え込みも中なども隈無く見て回る。沙理も一緒になって探す。なかなか見つからない。
「で、ここで財布がない事に気づいたんだね?」
まるで敏腕探偵よろしく顎に右手をあてて沙理を見つめる。
僕の発言に無言で頷く沙理。
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