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「探偵さん。あたしの財布は無事に見つけられますか。中身は無事でしょうか。心配で心配で昨日の夜は一睡も出来ませんでした。無事に事件を解決して下さい」
アハッ。
一睡も出来なかったって今日財布をなくしたんだろう。
適当なノリ発言禁止だっつうの。
しかもあのインチキ臭い英語が出ていない。それだけ真剣に僕を乗せようとしているのであろうか。乗せられてると分かっても彼女の軽快なノリに、ついつい、いい気になってしまった。
…――実はこれこそが沙理の手であったのだが、今は気づかなかった。
沙理が快活にぺらぺらと軽口を続ける。
「どうぞ。よしなに」
「うむ。この難事件は少年名探偵翔太が無事に解決してみせますのでご安心を」
乗せられた僕も嬉しくて軽口。
そうして気を良くした僕は財布を一生懸命探す。
順調に辺りを捜索し続け、僕らが出会った場所(ゴール)まで辿り着く。ここで僕と沙理は出会った。沙理が後ろから僕の肩をとんとんと軽く叩く。咄嗟に振り向く僕。白く綺麗な人差し指に刺さる僕の頬。なんだよ。このタイミングで古来から伝わる伝統芸能ってなんの意味があるの。
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