02 スタート

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 そう思っていると近くで鎖に繋がれた犬がいて、けたたましく吠えている。さっきまで鳴いてなかったのに、なんで今になって猛烈に吠えているんだ。どことなく怒っているような気もするぞ。はて?  と思った矢先、重大な見落としていたぞとはっとする。 「沙理りん、沙理りんも、財布を落とす前にあの犬に吠えられましたか?」  いまだ探偵モードの僕。  ヘンテコ適当英語を封印してしまった沙理が笑う。 「はい。あの犬は目の前を通る人に対してすべからく吠えるようで、あたしが通った時も吠えられてビックリしてしまいました。でも吠えられた事実が今回の事件と関係あると?」  すべからくか。  さっき僕らが出会った時、吠えていなかった気がするけど……。  まあ、いい。僕は僕の名推理をおし進めよう。 「うむ。重大な事象でありますぞ」  僕のミジンコ脳が閃く。  いや、湧く。 「もしかしたらあの犬こそ事件を解決する重大な手がかりかもしれません。そうですね。この辺りを重点的に探しましょう。沙理りんはあちらを。僕はこちらを」  いい気になった僕が場を仕切り探す範囲を限定する。
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