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…――天才なんて大嫌いだ。
10月の時雨れたすぐれない空の下、僕は家路を急いでいた。競歩の選手かと思われるほどの早足。早く家に着きたい。もちろん本格的に降り出す前に帰らねば傘を忘れてしまった僕はずぶ濡れになる。しかし理由は雨に濡れるだけじゃなかった。
足が忙しないのはもう一つの理由の方が大きい。
僕は菊池翔太(きくち しょうた)。十七歳の高校二年生だ。黒髪のおかっぱ頭でサイドはツーブロックで刈り上げている。本当はこんなダサイ髪型は嫌なんだけど親にそうしろと強制されていた。菊池家の男子は上品であるべきだという妙なこだわりに縛られていたのだ。
本当に心の底から嫌になる。
うんざりだ。
僕の両親も結局天才というやつなのだ。
そんな僕だが背が低く童顔だからよく中学生と間違われる。自分的には心外だが、それでも間違われるものは仕方がない。仮に発育のいい男子中学生と僕を並べてどちらが中学生でしょうと10人にクイズを出せば全員が僕と即答するであろう。
それどころか正解を発表しても誰も信じないだろうね。
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