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いや、あれだけレンズが厚いのだ。仮に悪かったとしたらメガネなしでは行動不能ではあるまいか。少なくとも僕はそう考えてしまう。
彼女が優美な口を開く。
みとれる。
「マイ・ネーム・イズ、邑上沙理(むらかみ さり)。こんにちは。ハロー」
…――この時、僕は気づいてなかった。
いや、気づくべきだった。
悠長すぎた。
この中学生にも思える美少女が実は天才的なペテン師で世界を笑いでひっくり変えそうなどと目論むとんでもない輩だという事実に。僕は佳麗な沙理によってあり得ない怒濤渦巻く非日常へと引き込まれていくわけだ。すなわち波瀾万丈なる人生への片道切符でしかなかった。
彼女が続ける。
世界をひっくり返す第一歩が僕であったのだ。
「ユーは菊池翔太くんでしょ? あたしの事は沙理りんとでも呼んでよ」
彼女はヘンテコな英語を使う。
鼻につく。
しかし美少女とはいまだ鼻が触れそうな至近距離。
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