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「向崎課長、決まりました。これにしようと思います」
器子はカタログを持って向崎の席に移動すると、選んだものを見せた。
「うん。いいじゃないか。決まったら、まずは、先方に提案する。価格と数量確認の打診メールを送っておくように。OKが出たら、江武竹商事に納期確認。納期が分かったら、見積書を作成して再度メール送信。原本を担当者に郵送すること」
江武竹商事は、厨房備品業界最大手の卸売り業者で、カタログもここが出している。
「はい」
結局、向崎の手助けを最初から最後まで受けてしまった。
「忙しいのに、すみません」
謝る器子に、向崎は意外なことを言った。
「遠慮はいらない。新人の指導は僕の仕事。それに、悩んでいる時間がもったいない。これからも、困った時はすぐに相談すること。そして、結果を報告すること。これが、報連相だ。これからも忘れないように」
「はい」
報連相は新人研修で教えられていたのに、実務で使うのに躊躇してしまった自分を反省した。
チェーン店本部から注文書が来たら、社内システムに受注情報を入力する。
データは購買課へ回り、購買課から、メーカーまたは販売卸業者へ発注する。
納入予定日が入力され、納品手続きを行う。
請求書は経理から郵送されて、銀行振り込み以外の回収は営業が担当する。
デザイン課の仕事は、選ぶところまで。
それ以降は、他部署にお任せだ。
このように、社内の連携によって仕事が進んでいくのだが、これが、逆に器子を悩ませたりする。
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