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それからマルクは、私も彼も留学生であり警察沙汰は避けるべきと思ったこと、実害が無いと判断したこと、犯人の確保よりも私を安全に帰宅させたかったことなどを話してくれた。
エマは苦しい表情で話を聞いていた。二人とも混乱している私を気遣い、シャワーを浴びてくるように勧めてくれた。
バスルームで、嗅ぎ慣れた石鹸の匂いに包まれる。
ーーあの時も混乱しながらシャワー浴びたなぁ……
ギルと初めて一晩を過ごした時の記憶が蘇った。
そして、いろいろな疑問が湧き上がってきた。
「Thank you for your kindness. I'm getting settled. (気遣ってくれてありがとう。ちょっと落ち着いてきた。)」
パジャマに着替えた私は、リビングに行って2人に頭を下げた。
エマは3人分のミルクティを淹れてくれていた。
私は先程考えたことを口にする。
2人組は私を知っているような、そんな口振りが見られたこと。買い物帰りに後を付けられた記憶は無く、おそらくフラットの近くで待ち伏せされていたのではないかということ。
そして訛りが地元のものであったこと。
私がシャワーを浴びている間に、2人も自己紹介をしてから話しあったことを説明してくれた。
相手に住所が知られていること、目的が達成されていないこと、付きっ切りで誰かがガードするわけにもいかないこと、などが挙げられた。
「So, Aki. Will you stay my home with my parents for a month or something. (ねぇ、亜希。私の両親の居る家に一ヶ月かそこら、泊まらない?)」
私は戸惑ったが、ホームステイの経験もいいんじゃないかと言われ、来週から新年までの期間をエマの実家で過ごすこととなった。
「Well, could you keep it a secret between us, I mean this incident, (このこと、秘密にしてくれる?事件のこと…)」
「Sure. But what about your boyfriend? (もちろん。でも彼氏はどうするの?)」
エマが私に心配そうに尋ねる。
私は少し考えてから、
「I will tell him when we meet next time. (次会ったときに伝えるよ。)」
すぐに会えない状態の彼に、余計な心配は与えたく無かった。
私は窓の外に初雪が降っていることに気付いた。暖かい友人に囲まれて、私は冷静さを取り戻していた。
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