秘密

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秘密

大学の図書館は徒歩10分で着く。24時間開いていて、勉強するには最適の場所だった。 身体は重かったが、午後の授業の予習をしたかった。 早朝の図書館は人がまばらだった。 席を決めようと歩き回っていると、クラスメイトが居た。 「Good morning, Marc.」 イタリア人とスペイン人のハーフの彼ーーマルクは、4歳年上のクラスメイトだ。 「Good morning, Aki.」 スペイン訛りの英語にはもう慣れた。彼は人懐こい性格で、グループワークの時に発揮するリーダーシップも素晴らしい人だ。 マルクも同じ授業の予習をしていた。聞けば、昨夜は遊んでしまい予習が出来なかったので図書館に来たらしい。 一睡もしてない割に元気ね、と言って私たちは予習を始めた。 今日の授業に関わらず、留学生の私たちは全ての授業を予習してから臨む必要があった。留学生だけの授業もそうだが、現地の学生と受ける授業は特に展開も早くてついて行くのに必死だ。私よりだいぶ英語ができるマルクも例外では無かった。 1時間ほどで予習を終えた。マルクが居なかったら、2時間は掛かっていただろう。 2人とも朝食すら食べていなかったので、学食に向かうことになった。席を片付けていると、私を呼ぶ声がした。 「亜希!」 振り返ると、結実と紗央莉が居た。 マルクに少し断りを入れて、2人の元へ向かった。 「おはよ!あ、春香は?」 紗央莉の所に泊めると聞いていたが、姿が見えなかった。 「さっき部屋まで送って行ったよ。授業まで寝るって。」 結実が苦笑いして言う。 「そっか、ごめんね。私が連れて帰らなきゃいけなかったのに。」 紗央莉は控えめに微笑んだ。 2人は私や春香と違い、大学附属のESLに入っていた。日本の大学も違うので、こちらに来てから知り合った。ESLの授業はあまり予習も要らず、簡単すぎて退屈だ、と愚痴を聞くことが多い。 私はマルクと食事する旨を伝えて、2人の元を去った。
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