秘密

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ひたすら勉強に打ち込んでいたら、あっと言う間に木曜日になっていた。はやる気持ちを必死で押さえつけて、私は身支度を始めた。先日買ったミニスカートを履く。春香が、このくらい普通だよ、と言うので買ったものの、よく見るとかなり短い丈だった。 キャミソールに着替えた春香に声を掛けて、紗央莉と結実のフラットに向かう。私たちは別々のアパートに住んでいる。私はスカートの丈が気になって、長めの上着を羽織って出掛けた。 2人はすでにアパートの外に出て待っていてくれた。 「スカートみじかーい!」 膝丈のスカートを履いた結実がわざとらしく言う。私は苦笑いで応えた。紗央莉はいつものジーンズを履いている。 話しながら歩くと、すぐにCLUB edgeに到着した。 いつもより早い時間帯で、ダンスホールへ続く廊下は歩きやすかった。 春香は気合いを入れてすぐに輪に加わった。私は節約すると決めていたので、ミネラルウォーターを買って結実と紗央莉と席に着く。 昨日のお出掛けの話で盛り上がっていると、後ろから肩を叩かれた。これで3回目だった。 「Hey, won't you dance with me?(ねえ、踊らない?)」 私はギル以外の男性と踊る気が起きなかった。 「I wish I could. (ごめんなさい。)」 やんわりと断ると、また結実と紗央莉の方へ向き直る。 結実が不思議そうに私を見て、 「なんか今日、よく声掛けられるね。」 紗央莉も頷く。 「うん……スカートだからかな?」 店内は薄着の人に空調を合わせてあって、私は上着を脱いでいた。 おそらく勘違いでは無いがーースカートの日とジーンズの日では、パートナーが見つかる確率が違うと思う。春香は今日もジーンズだったな、と思ってしまった。 しばらく3人で話していると、現地の少年たちが集団でこちらに来るのが見えた。 一気に体温が上がる。 集団の後ろの方にギルがいた。 しかしドキドキは一瞬で冷めて、ギルの目線を辿る。彼の周りには同世代くらいの女の子が3人、ぴったりくっついていた。 私は湧き上がる感情が、嫉妬なのだと気付く。 色素の薄い、華奢な女の子たち。たった3歳の差なのに、彼女たちは私とは持っているエネルギーが違っていた。 ギルの存在に気を取られていると、また後ろから声を掛けられた。男性は現地の人らしく、そっと私の丈の短いスカートに触れている。
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