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男性のレストルームに連れ込まれ、男の一人とともに個室に閉じ込められた。なす術は無い。ここまでされたら、もう彼らの目的は判っていた。
「You've got big boobs than I expected. (想像してたよりデカイ胸だな。)」
トイレに座らされ、追い詰められた私は声を出せずにいた。
個室の外の見張り役の男の笑い声が聞こえる。
「You look so childish, but your boobs and ass are matured. (見た目はガキなのに、胸と尻はいい感じ。)」
トップスが強引にたくし上げられた。
「やだ、やめて……」
声が震える。ギル以外に触れられたくない。頭が真っ白になりそうで、私は意識を引き止めるのに必死だった。
男のズボンの下に張り詰めた欲がはっきりと見えて、涙が零れた。
その時ーー
「Aki! Are you there?」
控えめな男性の声がした。確かに名前を呼ばれた。それを信じて声を出す。
「たすけて……」
声を張り上げたつもりなのに情けない声しか出ない。しかし、声の主は気づいてくれたらしかった。
「Open the door, otherwise I will call the Police. (ドアを開けろ。さもないと警察を呼ぶぞ。)」
先程とは打って変わって強い口調になったその声に、目の前にいた男は黙ってドアを開けた。
視界に飛び込んできたのは、ーーマルクだった。
マルクは怒りに震えていたが、強い目線で彼らに立ち去るよう伝えた。
「Can you come out? (出てこられる?)」
私は頷いて、トップスを直して歩き出そうとした。しかし、脚は震えて力が入らない。マルクはそっと筋肉質な腕を回して私を抱き上げ、そのまま店を後にした。
タクシーでフラットに戻った私はリビングで読書をしていたエマを見るなり、涙が溢れた。
「What's wrong, Aki? (どうしたの、亜希?)」
エマは私を抱きしめ、ソファに座るよう促した。混乱していた私の代わりに、マルクが事情を説明した。
見たことのない男に連れられて、私がレストルームの方面に歩いていくのをマルクは見ていたらしい。
ダンスホールに戻ってきたら声をかけようと思っていたのに、一向に戻る気配がなかった。そして、向かった先が男性のレストルームと気付いて助けに来た……という訳だった。
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