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それから私たちはダンスホールを抜け、私の住むフラット(注釈:シェアのアパート)に向かった。
そうした間にもさっきのキスが頭から離れなくて、私は身体が火照るのを感じていた。
私の部屋に着くと、照明を着ける前に彼がわたしを抱きすくめた。
その瞬間、身体に電流が走る。
キスをして、キスをして……
早く肌に触れてほしくて仕方ない。
私は初めての感覚に戸惑いながら、それでもキスを求めた。数を重ねるごとに頭の芯がクラクラする。彼の息遣いも上がってきて、私だけじゃ無いのだと安心した。
月明かりに照らされた2人は深夜のフラットのシングルベッドで、欲望を絡ませた。
午前4時。
寝返りを打とうと思ったら、上手くいかない。
目を覚ますと、少年が隣にいる。
「え?あ、あれ?」
血の気がひいた。辺りを見回すと脱ぎ捨てられた服と使った形跡のある避妊具が3つ落ちていた。
携帯を見ると、テキストメッセージが来ている。紗央莉からで、春香が酔いつぶれたから自分のフラットに泊めるというものだった。
それを知って、私は安堵した。
昨夜の記憶がないわけではない。かなり酔っていたが、私は隣で眠る彼との夜をぼんやりと覚えていた。狭いフラットで、声が筒抜けになっていたはずだった。
白み始めた空に彼の白い頬が浮かび上がった。
上半身を起こすと、下腹部に違和感があった。昨夜のキスの時とは違う。なにか変な感じ。
急いでバスローブを羽織って、バスルームへ急ぐ。シャワーボックスに駆け込むと同時に、内股に温かいものが伝った。
ーーなに、これ?
透明で匂いのしない液体……
昨夜のことを考えたら合点がいった。
ーーこれが、もしかして……
そのままボディーソープで汗をながす。頭はまだ混乱していたが、石鹸の香りが私を冷静にさせた。
バスルームを出ると、もう1人の同居人、エマも居ないことに気付く。私は昨夜からのことがとりあえず秘密に保たれたことで、一気に緊張感から解放された。
自室に戻ると、彼はまだ寝ていた。日付が変わって、今日は金曜日。彼は学生だろうか?とりあえず起こさなきゃ……
「あ、名前聞いてない……」
呼びかけようとして気付く。私たちはお互いに名乗ることもしていなかった。
「英語はIとかYOUとか、代名詞ばっかり使うから……」
などと思いながら、ベッドに近づく。
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