第1章

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 携帯を閉じポケットにねじ込んだ。 ガムを膨らませパチンと潰す。 まるでそれを合図にしたかのように、 ホーム内にアナウンスが流れた。 『3番乗り場に十二時四分発下り電車が入ります。  黄色い線の内側に立って・・・』  彼女はそんなアナウンスに耳も貸さず、 黄色い線から半歩踏み出した。 ホーム内のけたたましいベルの音に負けじと、 Iポッドの音量を上げる。  それに気を取られたのか、 彼女は自分の背後に近づく人の 気配に気づくのが遅れた。
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