220人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
かつて由実と結婚した時も似たようなきっかけだった。
当時、とある企業の新商品のマーケティングを任された希一は、
由実が勤めていたデザイン会社に企画・立案を依頼した。
その時、その仕事を担当することになった彼女と知り合い、
仕事の打ち合わせをしているうちに
付き合うようになって結婚したのだ。
(パパは淋しがりやなのかも・・・)
亜希子は今でもそう思っている。
それに対して由実の方は違った。
もともと男勝りで、さばさばした性格の由実は、
希一に離婚を切り出された時もあっさりとそれを承諾した。
そして亜希子の親権を主張し、
慰謝料と養育費の確約を取ると、離婚届に判を押した。
相反する性格の二人であったが、
共通していたことがひとつあった。
それは一人娘である亜希子の気持ちを
まったく考えていないことだった・・・。
「すこし口紅キツいかな?」
由実が亜希子の前にかがみ、唇を突き出す。
最初のコメントを投稿しよう!