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荷物は教科書と服がほとんどだったので、案外早く片付いた。
調度品を見つめていると、エマがドアをノックした。
「Have you finished unpacking your luggage?(荷ほどき終わった?)」
「Yes.」
ドアを開けると、エマの綺麗な顔が間近に迫る。
「Now, you need to tell me about you and Gill. (さて、あなたとギルのことについて教えてもらいましょうか。)」
私は例の【一目惚れの彼】がギルであること。お互いに勉強を優先しながら逢瀬を重ねていること。歳は違うけれど、私はギルを尊敬していることなどを説明した。
エマは姉の表情で話を聞いていた。
「I didn't notice anything about it at all. (全く気付かなかった。)」
ため息をつくエマに、私もギルとエマが姉弟だって気付かなかったから、と笑いながら言った。
しばらくしてご主人ーーデイビッドが帰宅した。押しかけた私を快く受け入れてくれて、ギルとのことも好意的に受け止めてくれた。
あの事件以来、私は知らないうちに緊張の糸を張っていたらしい。
温かい家族のぬくもりを感じて、私はシャワーを浴びたらすぐに睡魔が襲ってきた。
ギルは久々の帰省だったのか、お父さんと話し込んでいる。自分のフラットにある布団とは全然違う、ふかふかのベッドに包まれた。月明かりの下、私はすぐに眠りに落ちた。
ーーコンコン
ノックの音が聞こえる。しばらくして静かに近づいた影が、私の頭をそっと撫でた。
目が開けられないくらい重たい。
私はギルの手のひらの感触に酔いしれて、また眠りについた。
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