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プライベートなお祝いだからというクレヴァン氏は、2人に気付かれないように会計を済ませていた。
何から何まで完璧な彼を見送って、諒と明日香は2人きりで最寄り駅まで戻ってきた。
2人で並んで、帰り道を歩く。
「……諒、長い間口も聞かないで……勝手に怒ってごめんね。」
明日香が諒を見上げて言った。
諒は首を横に振って、明日香に目線を合わせた。
「俺の方こそ、ほんとにごめん。発想全てが軽はずみで、自分のことばっかり考えてた。」
「そんなこと言わないで。私、頑張って諒にふさわしい人になりたいんだから。」
微笑む彼女の手を強く握り、2人は明日香のアパートへと向かった。
「……きれいにしてるね。うちとは大違い。」
諒が部屋を見渡して呟いた。
「そんなにひどいの?」
明日香が笑いながら諒を振り返った。
諒は明日香に逢えないことばかりを考えて、日常生活が蔑ろになっていた。
食事は全て外で済ませ、部屋はいつの間にか散らかっていた。
諒は笑顔の明日香に近付いて、リビングの入り口でキスをする。久しぶりの感触に胸が高鳴り、身体がすぐに熱くなった。
我慢が出来なくて、キスをしながら明日香の腰に手をまわす。
それに気付いた明日香が、少しだけ唇を離して言った。
「諒、シャワー入ろうよ。」
「……一緒に入ってくれる?」
諒の熱のこもった声に、明日香は恥ずかしそうに頷いた。
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