34人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、諒は先輩の結木と共に、今春入社した後輩社員数人に誘われて、社食で昼食を取っていた。
「村上先輩とやっとお話できたー!学内誌に載ってたのを見てこの会社に入ったんです。」
彼女は高橋実咲。リテールに配属されている。高橋は落ち着いている雰囲気だが、それでも溢れ出る若者の活力に、諒は押され気味だった。
ーー俺も年取ったな。
そんなことを考えながら食事をしていると、明日香が通りかかった。
結木は2人のことを知っていたが、表情には出さずに挨拶をした。
「遠藤さん、お疲れ様。」
「結木先輩、お疲れ様です。賑やかですね。」
明日香が笑顔を向けると、新入社員たちは一様に頭を下げた。明日香は少し離れた場所に座り、1人で食事を始めた。
高橋の隣に座る佐藤一勢が明日香を見つめて言った。
「結木先輩、あの人、綺麗な人ですね。」
「君は年上狙いか?遠藤さんは綺麗だよな、ほんとに。」
ーー結木先輩、根に持ってんな。
諒は結木が明日香に好意を寄せていたことをつい先日、本人から聞いていた。
「村上先輩、ID教えてください!」
高橋が携帯を取り出して言った。
「あー、俺、そのアプリやってないの。」
「ええっ……今時珍しいですね。」
ーー明日香なら逢いたいときに逢えるから要らないしな。
諒はなんの気なしに電話番号を高橋に伝えた。
最初のコメントを投稿しよう!