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……ピピピ……
着信音が鳴る。
明日香とソファで唇を重ねていた諒は、目線だけを携帯に移した。
「諒、出ないの?」
唇を少しだけ離して、明日香が尋ねる。
「んー……めんどくさい。」
そう言って明日香に再び唇を重ねた。着信音が途切れて安心したところで、すぐにメールの着信を知らせる音がなった。
「……諒。用事があるんじゃない?見るだけ見たら?」
諒はため息をついて携帯を見た。着信もメールも、高橋からだった。
〈メアド、結木先輩に聞いちゃいました。今日は楽しかったです。今から飲みに行くんですけど、村上先輩もいかがですか?〉
明日香は黙って諒を見ていた。画面は明日香から死角になっている。
ーーこれは多分……
飲みに行く以外の意図があることはなんとなくわかった。
携帯を机に戻すと明日香に向き直る。肩を抱き寄せると、明日香は不安そうな顔をしていた。仕方なく、諒は説明を始める。
「……後輩に飲みに誘われただけ。」
「行かないの?」
諒は寂しそうな顔をしている明日香の頬に手を添える。
「行かないよ。明日香に触れたいから。」
はっきり伝えると、頬がポッと赤くなる。
「でも、明日香もあれくらい積極的になってもいいかもね。」
明日香は不思議そうな顔をした。
「どういうこと?」
「あぁ、今日お昼食べてるときに、連絡先聞かれてさ。あの女の子。すぐに行動するって、やっぱり若さもあるのか積極的だよなぁと思って。」
言った瞬間、諒は空気が凍りつくのを感じた。
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