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ーーこれはまずい。
明日香は一気に無表情になり、スッと身体を離した。
「私、帰る。」
鞄を掴んで明日香が立ち上がる。
「ちょっと待って!ごめん……そういうつもりじゃ……」
明日香は冷めた目で諒を一瞥した。
「さようなら。絶対追いかけてこないでね。」
「明日香!待って、もう暗いし。」
諒の言葉を無視して、明日香は出て行ってしまった。窓を開けて、彼女が歩いて行く方を見守る。そして携帯を急いで操作した。
何度目かの長い呼び出し音の後に、明日香が電話に出た。
「無事家に着きました。ご心配お掛けしてすみません。さようなら。」
一方的に言葉を発して電話は切れた。
それから一週間、明日香は電話に出なかった。
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