第5章:世界は広かった

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(いつまで続くのだろう)  そもそも普段の仕事も順調とは言いがたい。  なぜなら、あれから浜村とは、いまだに職場では冷戦状態が続いているのだから。  純太郎からは吸殻事件の話題は出ることはなかった。純太郎にとっては過去の出来事なのかもしれないが、要にとってはまだ過去といえるまで割り切れていない。だからといって何ができるわけでもない。八方塞がりとはこういうことだろう。  森中工務店に顔を出すようになって一ヶ月ほどが経過した。  不毛であると思いながら、要は欠かさず工務店に顔を出した。  純太郎のパソコンレベルはあいかわらず上達しないし、工務店の面々の要に対する態度も変わりない。 (この毎日に意味があるのだろうか)  それでも通い続けているのは、半ば意地もあった。  公務員試験にも合格して、安泰の将来を約束された自分が、いきなり一般企業に就職して うまくいっていないだなんて自分のプライドが許さない。こんな恥ずかしい今の自分を知っているのは、和田だけで十分だ。そして誰かに知られる前に、挽回すればいいのだ。  『公務員もいいけど、サラリーマンも悪くなかったよ』そう言える自分でありたいのだ。
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