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暗がりの部屋を進み、スーツのまま寝室のベッドに倒れこむ。
『もう少し時間をくれないか』
そういうだけで精一杯だったけれど、そもそも"もう少し"で今の状況がよくなるなんて思っていない。
けれど、そう言うしかなかった。素直でまっすぐな和田からは、もう逃げられない。違う意味で腹をくくるしかない。獅子ヶ谷要らしさを一番知っている和田が、自分のことを思って言っているのだから間違いない。
こんなに自分は弱い人間だったのだろうか。
こんなにも思い通りにならないことだらけの人生だっただろうか。
ぐるぐると同じところを回っているような気がする。出口なんて、ゴールなんて、とっくに見失っていた。
和田だけがその答えを知っているのかもしれない。
けだるさが背中を押して、何もかもめんどくさくなって、要は落ちるように眠った。
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