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和田がスマホに設定したアラームだろうか。ピピピと部屋中に響き渡る電子音で目が冷めた。薄目を開けてみれば、見慣れない天井、見慣れない部屋、そしてぬくもりのある塊に包まれている自分。
(そっか、あのまま寝てしまったのか)
「ごめん、起こしちゃった?」
要に触れていた手がスマホのアラームを止め、その手は要を再び抱きしめてくる。その甘さを帯びた温かさに、要は躊躇なく身を寄せた。
「そうだよな、学校の先生のほうが会社員より朝はやいもんな」
「要はまだ寝ててもいいよ」
「いや、俺も自分の部屋戻ってから会社行くし、起きる」
「えへへ。今夜、要の匂いのする布団で寝るの、楽しみだな」
要はそんな和田の弾んだ声が聞こえなかったふりをした。
(何がそんなに嬉しいんだか)
そんな照れ隠しが無駄だと気づいていても、まだ友達からそれ以上の関係である実感がないのだから仕方ない。
「要」
呼ばれて和田の方に顔を向ければ、いつもの優しいまなざしが要を見つめていて、近づいてくる唇を迎えた。この何度も重なった唇が、要の全身を這いまわった昨日の記憶はそう簡単に消せない。
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