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猫の宮、という少し珍しいこの名前の由来は、猫をまつる小さな神社が市の北東にあるからだという。
驚いたことに、このささやかな神社、なんでも1000年ほどの歴史があるとか。
市の人口は80万人ちょっと。
都心へのアクセスは悪くないため、ベットタウンとして最近少し注目されている。
しかし、きちんと整備されているのは海沿いの新興地区だけ。
一歩内陸側に足を踏み入れれば、全く違った顔つきの街が広がっている。
街を覆うのは、葉脈のように広がり、曲がりくねる細い道。
都市計画なんて言葉をあざ笑うかのように、無秩序に家が立ち並ぶ。
そびえる高い塀に囲まれて、全く見通しのきかない十字路。
国道を外れるといきなり未舗装の道が始まり、気が付けば行き止まりなんてことは日常茶飯事。
加えて、この街には不思議と、似た外観の辻が多い。
そのため、どの角を曲がれば目的地にたどり着くのか、住民ですら迷うことがあるという。
そんな有様だから、外からの来訪者は、この迷路のような街の路上でしばしば途方に暮れる。
立ち止まり、自分が今来た道を振り返る。
戻るべきか?
それとも、進むべきか。
そして次の一歩を踏み出す。
その一歩が正しい道へと通じているものなのか、思いまどいながら……。
ああ、
機会があれば、あなたもぜひ訪れてみてほしい。
人も、人でないモノも迷わせてしまう、この猫神の街に。
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