夜の冒険

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「さてと。じゃあ、次は『開かずの教室』行きますか」 矢野が言うと同時に、階段を上へと登り始めた。 加藤と紺野が後に続く。 「真山はさあ、いいの? 女子を先行かせてて」 舟木が巽を振り返ると、おどけたように空手の構えの真似をしながら言った。 「……別にいいんじゃねえの? だいたい、俺、思いっきり消極的参加なんで」 巽が言うと、舟木は薄く笑って、内緒の相談事をするように声を潜め、巽と島田の顔を見た。 「じゃあさあ、もう帰っちゃわねえ?」  矢野や加藤と気まずくなったからもう帰りたい、……ってとこかな。 舟木の整った顔を見ながら、巽はそう推測した。 そして、共犯者を作ろうとしている舟木のあからさまな態度に、少し眉をひそめた。 「どう? 島田君は」 話を振られて、島田はひょうひょうとした表情を崩さないまま、言った。 「俺、どっちでもいいけど。でも、帰るなら女子達に断り入れてからじゃないと、後ですげー怒られんじゃない?」 「そうだな……。しかたねー。そのくらいは仁義切っとくか。」 舟木はため息をつくと、階段を三階に向かって上り始めた。 そのときだった。 三階から、バタバタっと乱れた足音が聞こえて、矢野が階段の縁に姿を現した。
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