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そのとき、誰の耳にもはっきりと、音が聞こえた。
ぺた……ぺた……
ぺた……
三階の廊下から聞こえてくる。
こちらへ近づいてくる足音だった。
紺野が震えながら泣き出した。
「マジ、やべーよ! 逃げるぞ!」
矢野が叫んだ。
「ちょっと待てよ! 加藤はどうしたんだって!」
思わず巽は怒鳴り返した。
すすり泣く紺野の肩をつかんで立ち上がらせようとするが、紺野はがくがく震えるばかりで、なかなか立ち上がることが出来ない。
島田がそばへ来て巽に手を貸し、両脇から支える形で紺野を立ち上がらせた。
足音は、階段のすぐそこまで来ているようだった。
彼らは一斉に、階段上へ視線を向けた。
そして――
「何にも音なんかしてないじゃん。」
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