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横山は、言葉を失った巽を見て、逆に疑いを深めたようだった。
巽の肩に手を置いて、さらに猫なで声を出す。
「なあ、よく考えてみろ。『二人で階段でふざけていて、真山が不注意で加藤を押してしまった。真山も加藤もふざけすぎたと反省しています』、と。もうこれでいいじゃないか」
巽は、あぜんとした。
結局、巽に罪を押し付けて、事態の早期収拾を図ろうとしているだけ。
真実がどこにあるかなど、横山にはどうでもいいことなのだ。
巽が黙ったままでいると、横山は急にそれまでの態度を豹変させた。
「おい、黙ってないで、何とか言ったらどうなんだ。お前がそういう態度なんだったら、先生は明日、他の連中を呼び出して話を聞くぞ。大ごとになるぞ。それでもいいんだな?」
横山の手が、巽の肩を乱暴に揺すった。
巽はその手を乱暴に振り払い、横山を無言でにらみつけた。
横山は払われた手を怒りのこもった目で一瞥すると、歯をむき出し、巽をにらみ返した。
「なんだその目は!! せっかく先生が穏便に収めようとしてやってるんだろうが! 俺にこんな余計な手間かけさせておいて、そんな態度しかとれんのか、貴様は!!」
横山はヒステリックに怒鳴り散らした。
「……!」
もう限界だった。
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