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「で、あればもう少し口の利き方に気をつけられたほうがよろしいでしょうな。そこであなたが話してるのを少し聞かせてもらいましたけど、完全に彼を犯人だと決めつけてお話しされていましたよ」
辰造はそう言うと、何か申し開きがあるか、とでも言うように、射るような厳しいまなざしで横山を見た。
巽を含め、たいていの者は、この目でにらまれると震え上がり、抵抗する意志をなくす。
そしてそれは横山も例外ではないようだった。
「は……はい。それはもう……まったくそういった意図は無くてですね、私の言葉が誤解を招いてしまったようでして、すみません。お詫びいたします」
横山は哀れなくらい腰を折り曲げて、頭を下げた。
辰造は、そこで初めて巽を見た。
ヒリつくような視線を感じながら、巽は、もごもごと口ごもった。
「あ……あの」
しかし、辰造は巽に弁明の時間を与えなかった。
「お前も、いい加減にすることだな。やるべきこともやらず、好き勝手なことばかりして、その挙げ句にこの様か。こうやってくだらない疑いをかけられるのは、お前がそれだけくだらない人間だと見られているということだ」
辰造の声は、広い待合室を一瞬で凍り付かせるように、冷え冷えと響きわたった。
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