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「でも罪は罪じゃ、もし刑事告訴されたらまぁまぁの確率で実刑や。兄チャンの場合やった年数も長いし金額もそこそこやから。示談が成立しても返済が滞れば直ぐに告訴やし、たとえ自己破産したところで、返済義務は免除にならんのや横領は。だから一日でも早く返せるように働く他ないんや、いけるか?兄チャン。」
坂元は白い骸骨が汗で所々禿げ始めてきたミッドナイトの顔をしばらく見つめから深く頷いた。
もう涙は零れていなかった。
「はい、必ず返します。」
「おっ、よう言うたな、無事に示談成立してもろうたら、焦らずコツコツ返せばええ。わしもあんまり偉そうなことは言えんけど、まずは誠意示すことや。迷惑を掛けた相手に、心の底から頭を下げる。そこからや、それが人の道や。」
「…恥ずかしです…私利私欲の為に長年世話になった会社を簡単に裏切って、そのあげくに死んで全てチャラにして逃げようとした自分が…そしてあなたに会えば何とかしてくれると思っていた自分のあまさが…必ず償います。」
「若い頃のちょっとしたボタンの掛け違いは確かに誰にでもある。でも犯罪となると話は別や、だから今回の事はちゃんと己に知らしめなぁあかんよ、人生これからやしな。夢は?夢とか無いんかい?」
「夢ですか…夢かぁ…さっきまで死ぬ事しか頭に無かったんで…」
「そりゃそうや、ぎゃはぁはぁはぁはぁはぁぁぁぁぁぁ」
坂元はミッドナイトの下品でえげつない笑い声が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
「そうだ!夢あります一つ」
「おお、ええぞなんや!」
「自分が死ぬと決めた時、一度でいいから海外旅行に行きたかなぁってハワイに。だから全部返したら行ってみたいですハワイ。」
「ハワイはええぞぅ~海も山も綺麗だし、とくにお姉ちゃんが最高やでぇ」
「もしかしてミッドナイトさんはハワイ出身なんですか?」
「だ、だ、誰がアメリカ人や!生まれも育ちも大阪の岸和田じゃボケ!シバキ倒して首都高放り込んだろかぁ!」
「す、す、すいません…」
おわり
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