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細長い神社の参道のちょうど真ん中辺りにある鳥居をくぐると、右側に見えてきた路地のとば口でGooglemapのチャイムが鳴った。
真鍮の表札には『midnight 』
ほとんどの外観を蔓草に覆われた建物の、辛うじて免れてる扉を手前に開くと、薄暗い部屋の奥でくわえタバコのミッドナイトは椅子に鎮座していた。
白の塗料で顔いっぱいに骸骨のペイントを施して、右手にはハンドルの部分に燻し銀で蛇の装飾を施した杖を握っている。
足を組んで、一緒の入り込んできた外の光にペイントの奥に潜んでいる目を細めていた。
「す、すいません…え、え、霊媒師の『ティマイオスの娘』さんから紹介してもらってきました…坂元です…」
ミッドナイトが目の前にあるパイプ椅子に顎を小さく動かして坂元を促す。
扉が閉まると薄暗いその部屋の中は、壁と床の繋ぎ目がわからなくなり、坂元は急に違う世界に踏み入れたように錯覚して落ち着きを失う。
煙草の煙がもうもうと立ち込める室内に次第に上下感覚と並行感覚が麻痺しだし、まるで歪んだ時空の中を漂っているかのようで三半規管が脳幹を刺激てして足元がふらつく。
そしてなにより胸をムカムカさせるその煙草の臭いが坂元の不安を煽った。
坂元がパイプ椅子を引き寄せると、震える手のせいで床をカタカタと鳴らした。
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