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ミッドナイトはおもむろに立ち上がると、右手で持っていた杖の先で床を二回叩いて天を仰いだ。
薄暗い部屋の中が急に狭く感じる。
すると今度は杖を高く突き上げクルクルと器用に回し始めた。
「うぅぅぅ~ん、そやなぁぁぁ…うんそやなぁ、うぅ~んそやなぁ…まぁええかぁぁぁ…」
ミッドナイトはそう呟いて、持っていた杖を左手に持ち替え、手のひら見えるように右手を坂元の目の前に差し出した。
「ヨッシャ!二万円、二万円でええよ今日は特別サービスしたるわ」
坂元はキツネにつままれた様にポカンと口をあけてミッドナイトを見上げる。
「に、二万円って?」
「どアホ!この世にただの物なんてあるかぁ!助言料や!」
「あぁそうか…そ、そうですよね」
そそくさと財布を取り出して二万円を払う坂元。
ミッドナイトはその二万円を律儀に自分の財布にしまうと、代わりに一枚の名刺を取り出して坂元に渡した。
「アディーオス法律事務所…?」
「そこに、ショートカットのえらいどブスの真紀ちゃんちゅう子がおるから、わしの話しが終わったらそこに行くんや」
「はぁ…」
気の無い返事で答える坂元。
「まず、親、親戚、兄弟を回って今の事情を話して金を借りるんや、車なんかの自分の資産があれば全部現金にしろ…そうや!横領しても退職金は会社が支払う義務があるから、それも回せばええ。」
「車は持っていませんし、いまさら親に話しても…どうするんですか?」
「返すんや、だから10万でも20万でもええ、とにかく集めるんじゃ」
「か、か、返すんですか?1千9百万円をですか?いまさら…ですか…返せないからミッドナイトさんに…」
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