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「ハヤオさん!」
見下ろすと。
アキジが。
肩で息をしながら。
こちらを見ていた。
「レーダーは復旧させましたよ」
「君の兄が、出るよ」
塔の色が白く変わる。
拘束が緩んで。
「まあ、
仲良くやろうよ。
ハヤオ」
ユキは。
腕を解くと。
ハヤオを跨いで。
梯子をするすると降りていく。
「結局、警報が鳴らないのは、
何だったの?」
アキに聞いてみると。
「恒星からの風ですよ」
「風?」
「惑星を照らす、
惑星の何万倍もの大きさを持つ、
自ら光る星が、
すぐそばにあるんです。
その星は、
目に見える光だけじゃなく、
見えないエネルギーも飛ばしてて、
それを風と呼んでるんです」
「見えないエネルギー」
「常にあるけど、
急に強まることがあって、
そうなると、
発電所とか、
電気がたくさん集まる場所で、
いろんな不調が起こるんです。
調べたらやっぱり、
風が強くなってました」
恒星の風。
「リーダーが言ってた風って」
「その恒星風のことです」
最初に警報が鳴らなかった時。
アキは走って十二時班のところへ行った。
通信が乱れてることに。
気づいたんだろうか。
空では、白い光を受けながら十八時班が飛ぶ。
「ありがとう、アキ」
「え?」
アキはハヤオの礼に。
微笑んで首を傾げた。
ハヤオは気づいていた。
アキの目が。
ハヤオよりもずっと。
遠くの空まで見通していることに。
ハヤオが気づいたことに。
アキも気づいたことを。
ハヤオは気づいていた。
見るべきものが見えるとはなんだろう。
アキは違うのか。
トーマやマキも、ナツイチも違うというのか。
「俺、掃除屋になるのかな」
「そうですよ」
アキはあっさりそう答えた。
「最初から決まってます」
「最初?」
「1番最初から」
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