4章 風が吹く

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「掃除屋が来た!」 「兄ちゃん!掃除屋来たぞ!」 「はあ?また来たのかよ」 「今日は何持ってきた?」 「お菓子?」 「今日はパンだ」 長ーいパン。 ハヤオの腕よりも太い。 「やったあ!」 「食うぞ!」 「大漁だー!」 チビたちが、担ぎ上げていく。 「メシで釣るな」 ガチャガチャと歩いて。 裸足で歩いて。 無邪気な弟たちに。 ついて行く。 「釣ってない。  ここへ来ると腹が減るから、  俺の食料として持って来てるだけだ」 掃除屋は、靴を履いてた。 掃除屋の上着は着てないが。 印の入ったシャツを着てた。 「1人で食う気ないだろ」 「みんなで食うとうまいだろ」 弟たちを見る目。 穏やかな目。 静かな目だ。 前に見た。 飛ぶ時の目と。 変わらない。 「あんた、一緒に飯食う相手もいないのか?」 「いる。同じ班の先輩たちが」 「じゃあそっちで食えばいいだろ」 「たまには気分変えたいんだよ」 「そっちの気分転換に使うな」 「お前も、日頃の鬱憤晴らしに使えばいい」 「晴らすようなことないんで」 「あるだろ」 「ない」 「ないのか」 「ない」 言い切った。 意地じゃない。 ないものは、ない。 掃除屋は、それ以上突っ込まなかった。 7当分したパン。 面倒見の良い妹が、綺麗にちぎった。 「大人は端っこの硬いとこ」 そう言って。 最後に座った掃除屋と。 ハヤオには。 両端を渡す。 「いっただきー」 弟たちは、早速食う。 妹も、食う。 掃除屋も食う。 ハヤオも食った。 「ハヤオ、お前何歳?」 掃除屋が。 口いっぱいに頬張りながら。 ハヤオを見る。 「しらね」 食いながら、もごもご答える。 「じゃあ、お前らは?」 弟たちを見る。 「歳?」 「知らなーい」 「歳数えてないし」 「生まれた日も知らなーい」 「背え高いやつが年上!」 「チビが子ども!」 「掃除屋は大人!」 「大人ー!」 掃除屋は笑った。 弟たちには、名前がない。 「そこの3匹は、バカ、アホ、ドジ。  妹はガミガミ。  チビはチビ」 「ひどいよ兄ちゃん」 「そーだそーだ」 「誰がガミガミよ」 「いつまでもチビじゃないからな」 妹まで加わってうるさくする。
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