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「掃除屋が来た!」
「兄ちゃん!掃除屋来たぞ!」
「はあ?また来たのかよ」
「今日は何持ってきた?」
「お菓子?」
「今日はパンだ」
長ーいパン。
ハヤオの腕よりも太い。
「やったあ!」
「食うぞ!」
「大漁だー!」
チビたちが、担ぎ上げていく。
「メシで釣るな」
ガチャガチャと歩いて。
裸足で歩いて。
無邪気な弟たちに。
ついて行く。
「釣ってない。
ここへ来ると腹が減るから、
俺の食料として持って来てるだけだ」
掃除屋は、靴を履いてた。
掃除屋の上着は着てないが。
印の入ったシャツを着てた。
「1人で食う気ないだろ」
「みんなで食うとうまいだろ」
弟たちを見る目。
穏やかな目。
静かな目だ。
前に見た。
飛ぶ時の目と。
変わらない。
「あんた、一緒に飯食う相手もいないのか?」
「いる。同じ班の先輩たちが」
「じゃあそっちで食えばいいだろ」
「たまには気分変えたいんだよ」
「そっちの気分転換に使うな」
「お前も、日頃の鬱憤晴らしに使えばいい」
「晴らすようなことないんで」
「あるだろ」
「ない」
「ないのか」
「ない」
言い切った。
意地じゃない。
ないものは、ない。
掃除屋は、それ以上突っ込まなかった。
7当分したパン。
面倒見の良い妹が、綺麗にちぎった。
「大人は端っこの硬いとこ」
そう言って。
最後に座った掃除屋と。
ハヤオには。
両端を渡す。
「いっただきー」
弟たちは、早速食う。
妹も、食う。
掃除屋も食う。
ハヤオも食った。
「ハヤオ、お前何歳?」
掃除屋が。
口いっぱいに頬張りながら。
ハヤオを見る。
「しらね」
食いながら、もごもご答える。
「じゃあ、お前らは?」
弟たちを見る。
「歳?」
「知らなーい」
「歳数えてないし」
「生まれた日も知らなーい」
「背え高いやつが年上!」
「チビが子ども!」
「掃除屋は大人!」
「大人ー!」
掃除屋は笑った。
弟たちには、名前がない。
「そこの3匹は、バカ、アホ、ドジ。
妹はガミガミ。
チビはチビ」
「ひどいよ兄ちゃん」
「そーだそーだ」
「誰がガミガミよ」
「いつまでもチビじゃないからな」
妹まで加わってうるさくする。
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