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今までずっと。
目を閉じてたことに。
今気づいた。
目の前には、掃除屋。
じゃなく。
かつてそう呼んでいた人。
暗がりの中に。
立って。
窓からの。
惑星明かりに。
半身だけ照らされている。
「……掃除屋………」
じゃなくて。
頭をふる。
自分を見おろす。
イスの上に、膝を抱えて。
眠っていたらしい。
「夢………」
みていた。
昔の夢。
この掃除屋の、そばにいようと。
決める前の。
夢。
「リーダー…」
「ハヤオ、頼みがある」
「頼み?」
「仕事だ」
リーダーについて。
屋上に設置された。
電波塔の梯子を登る。
惑星は沈み、また昇ったようだった。
地上で一番高い場所。
登り切ると。
「ナツイチ、交代だ」
金網の床に鉄柵で囲われた。
一人だけ座れるくらいの場所に。
ナツさんが陣取って。
空を見上げていた。
「了解」
空から目を離さないまま。
ナツさんは笑う。
「ハヤオか。
大丈夫?」
「何が?」
「ここでレーダーの代わりに、
ゴミが降らないか見張るんだよ」
柱に括り付けられた通信機を指して。
「見つけたらこれで、
勤務班に伝える。
できる?」
「えっと、
うん。
多分」
「多分じゃダメ。
人が死ぬぞ」
「えぇ」
ハヤオはリーダーを見る。
「ナツイチはもう、
12時間ここにいる。
交代しなきゃならない。
お前の目が頼りだ」
そう言いながら。
ハヤオの腰に自分の装備していたベルトを巻きつけ、柱に繋ぐ。
「今哨戒に飛んでるブルーム、見える?」
「うん」
「あの軌道が都市の外縁ね。
今飛んでる高さは最上層。
あそこから内側に入りそうなゴミを報告して。
まず方角、それから高度を伝える。
いい?」
ナツイチがやっと立ち上がり。
ハヤオに場所を譲る。
「2時間したら戻るから。
何かあればすぐに呼んで」
「うん」
ナツイチがしていたように。
じっと空を見上げる。
惑星の空に。
今のところゴミはない。
数秒おきに身体の角度を変える。
勤務しているのは六時班だ。
飛び方でなんとなく分かる。
静かで、規則的な飛び方。
マキの癖が似ている。
吸って吐いて、吸って吐いて。
呼吸のように繰り返す。
星が陰ると、ゴミが降る。
通信機で報告する。
「南、最上層」
「西、最上層」
「北西、最上層からもうすぐ上層」
「東から南にもしかしたら抜けるかもだけど、
最上層」
ブルームが飛んでいき、その下をダストパンが5機。
綺麗な円錐を描いて飛ぶ。
ブルームを頂点に。
時計回りに円を描きながら拾う。
最後のひとかけらを拾ったあと、数秒かけて後続がないか確認をしてから、下層の3機が戻り、中層の2機が戻り。
最後にブルームが戻る。
同じ作業を3度繰り返したところで、ナツイチが戻ってきた。
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