4章 風が吹く

6/14
前へ
/58ページ
次へ
「ちゃんとやってるね」 「簡単だよ」 ナツイチにそう答えながらも、空から目を離さず、少しずつ角度を変えていく。 「交代」 ナツイチがベルトを柱に繋ぐ。 「待って」 またゴミが降る。 「北北東、最上層に入る」 「了解」 そう言って出たのは十二時班だった。 女の声が答えた。 「ユキさんだ」 「さっきと違う」 全く違う飛び方だ。 ゴミに向かって一直線。 まるでぶつかるかと思う距離で、撃ち抜く。 砕けたゴミは、弾き返されるようにそれまでの軌道の反対側へ散らばる。 やっと追いついたダストパンも、ゴミに飛び込むように拾う。 急カーブを描いて折り返して、また拾う。 ダストパン同士がぶつからないのが不思議だ。 上層に、ブルームと同じ高さで3機。 中層にはそれより遅い2機。 下層にはいない。 高く昇った惑星に、その翼が照らされる。 「惑星の明かりがあるからな。  この時間は、上で拾えば拾うほど楽だ」 ナツイチが教えてくれる。 十二時班が戻ろうとする背後に、またゴミの影が映る。 「北北東、最上層。  後続がある」 ハヤオが伝えるが、返事がない。 「北北東だ、ゴミが降ってる。  聞こえる?」 ナツイチが自分の通信機を取り出す。 「シマさん出て!」 下で音がして、ブルームが飛び出す。 それに気づいた十二時班がようやく異変に気づく。 「なんで?」 「通信不良だ。  多分ユキさんのが壊れた」 ゴミはすでに上層に入る。 「間に合わない」 「いや間に合わせる」 2機のブルームが砕く。 欠片が飛び散る。 ダストパンは引かずに高い位置で拾う。 「嫌な感じがする」 「ハヤオ?」 血が巡る。 呼吸を忘れて、目を凝らす。 ゴミが2箇所で散る。 5機のダストパンは近すぎる。 欠片の間を翼が横切る。 近すぎる。 早すぎる。 高すぎる。 「当たる…!」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加