4章 風が吹く

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1機のダストパンだった。 ブルームの砕く動きを、他の機体に隠されて見逃したのだろう。 鋭く回転するゴミが。 ほんの子どもの拳ほどの塊が。 空を切った。 惑星明かりを反射して。 白く光ったと思ったら。 ぐしゃり。 1機のダストパンに。 直撃した。 「   うそだ    」 ナツイチの口から漏れたのは。 衝突の一瞬前だった。 何が起こるか分かった。 何もできなかった。 思った通りに。 その小さな欠片は。 掃除屋の装備を突き破って。 鉄の鳥にぶつかった。 弧を描いて。 鳥が舞い上がり。 そして。 「落ちる…」 ハヤオは、通信機を握りしめたナツイチの手を掴んだ。 「北東、中層」 驚くほど静かな声だった。 それでも、ナツイチの肩がびくりと跳ねた。 返事はなかった。 でも一瞬の後、ブルームが。 急激に高度を下げた。 自由落下する、壊れた鳥を追い越した。 十二時班の班長だった。 その赤い銃口が。 翼を持ったゴミを。 下から。 撃ち抜いた。
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