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それから何日も。
掃除屋は、来なかった。
このまま、2度と会わないかもと。
ふと思って。
少し、後悔して。
まあいいやと、投げ捨てて。
それどころじゃあなかった。
ゴミを拾って。
メシが必要だった。
掃除屋が来ると、タダで食えてたけど。
来ないから。
拾わなきゃ。
数日おきに、タダ飯が食える生活に。
慣れてしまっていた。
忘れてた。
大変さとか。
危険なこと。
ゴミ山の、普通。
甘くはなかった。
でも。
掃除屋は、また来た。
鉄の鳥でやって来た。
惑星が登る前。
暗闇にとけて。
星明かりの、間を縫って。
「来たぞー」
何も変わらない。
同じ調子で、住処に降りる。
ひと月くらいぶり。
変わらない。
でも、こっちは変わった。
「掃除屋、来たんだ」
住処から、顔を出す。
「もう来ないと思った」
「遅くなった。立て込んでて」
「知ってる。
最近ずっと、ゴミの量がひどかったからな」
空を見上げる。
昨日なんか、本当にひどかった。
住処に落ちなかったのが。
不思議なくらいに。
掃除屋は、作業着のままだ。
仕事が終わって、そのまま来たんだ。
「ちょうどよかった。
あんたも、見送りに間に合って」
「見送り?」
ハヤオはうなずく。
掃除屋は、気づいた。
いつもなら。
エンジン音を聞きつけて。
飛び出して来るはずの。
弟たち。
1人も。
出て来ない。
ハヤオの肩越しに。
見えた。
非常食の戸棚。
空っぽだった。
「こっちだ」
住処から。
お気に入りの丘の。
反対側へ。
惑星の。
沈む方。
「あいつらに、名前、付けたんだ」
裸足で、歩きながら。
ポツリと言う。
「えっ?」
掃除屋は、聞き返す。
「あんたなんかに、付けられるの、嫌だから」
肩越しに振り返った。
目があったハヤオの表情に。
なんと声をかけたらいいのか。
戸惑っているようだった。
足の傷が。
増えていく。
ちっとも、気にしないまま。
歩き続ける。
「だから、俺が付けた」
寂しい。
その感情が。
言葉に滲み出る。
「3匹のうるさいのは、
アサ、ヒル、ユウにした。
あいつら一日中うるさいから」
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