4章 風が吹く

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それから何日も。 掃除屋は、来なかった。 このまま、2度と会わないかもと。 ふと思って。 少し、後悔して。 まあいいやと、投げ捨てて。 それどころじゃあなかった。 ゴミを拾って。 メシが必要だった。 掃除屋が来ると、タダで食えてたけど。 来ないから。 拾わなきゃ。 数日おきに、タダ飯が食える生活に。 慣れてしまっていた。 忘れてた。 大変さとか。 危険なこと。 ゴミ山の、普通。 甘くはなかった。 でも。 掃除屋は、また来た。 鉄の鳥でやって来た。 惑星が登る前。 暗闇にとけて。 星明かりの、間を縫って。 「来たぞー」 何も変わらない。 同じ調子で、住処に降りる。 ひと月くらいぶり。 変わらない。 でも、こっちは変わった。 「掃除屋、来たんだ」 住処から、顔を出す。 「もう来ないと思った」 「遅くなった。立て込んでて」 「知ってる。  最近ずっと、ゴミの量がひどかったからな」 空を見上げる。 昨日なんか、本当にひどかった。 住処に落ちなかったのが。 不思議なくらいに。 掃除屋は、作業着のままだ。 仕事が終わって、そのまま来たんだ。 「ちょうどよかった。  あんたも、見送りに間に合って」 「見送り?」 ハヤオはうなずく。 掃除屋は、気づいた。 いつもなら。 エンジン音を聞きつけて。 飛び出して来るはずの。 弟たち。 1人も。 出て来ない。 ハヤオの肩越しに。 見えた。 非常食の戸棚。 空っぽだった。 「こっちだ」 住処から。 お気に入りの丘の。 反対側へ。 惑星の。 沈む方。 「あいつらに、名前、付けたんだ」 裸足で、歩きながら。 ポツリと言う。 「えっ?」 掃除屋は、聞き返す。 「あんたなんかに、付けられるの、嫌だから」 肩越しに振り返った。 目があったハヤオの表情に。 なんと声をかけたらいいのか。 戸惑っているようだった。 足の傷が。 増えていく。 ちっとも、気にしないまま。 歩き続ける。 「だから、俺が付けた」 寂しい。 その感情が。 言葉に滲み出る。 「3匹のうるさいのは、  アサ、ヒル、ユウにした。  あいつら一日中うるさいから」
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