4章 風が吹く

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ガチャガチャと。 歩いて。 思い出す。 いつもいつも。 あとをついて来て。 仕事を手伝うかと思えば。 邪魔したり。 ふざけたり。 怒ってばかりいたけど。 本当は。 楽しかった。 「妹はヨナカ。  3匹が静かになると、逆にうるさいから」 心配性だった。 ちょっと大人なつもりで。 ふざける3匹には、混ざらなかった。 でも、面倒見が良くて。 みんな。 頼りにしてた。 怒られて。 嫌な態度をとると。 食事も。 寝床も。 服も、没収で。 こわい子だった。 強い子だった。 「チビは、ユメ。  あいつは夢ばっか見てたからな」 掃除屋になってって。 最初に言ったのは。 チビだった。 宝物の、紙の本を。 大切に。 持っていた。 みんなの名前は。 その本から、探した。 読み方も、言葉の意味も。 こっちは聞く気もないのに。 延々と、話して聞かせた。 夢を、みんなに。 見せていた。 ひと山おりて。 窪地。 「ここだ」 そこに。 いた。 5人の。 弟たち。 いつも寝るとき。 くるまっていた。 ボロ布に。 頭まで。 包まれて。 地面に。 横たえられた。 亡骸と。 なっていた。 「え」 掃除屋は。 見て。 すぐに。 分かった。 でも。 信じられなかった。 「そんな」 死んだのか。 みんな。 なぜか。 くるまれた上からでも。 誰だか、分かる。 死んでいることも。 分かる。 「最後の、お別れ」 ハヤオは、マッチをとりだした。 電車の外壁らしき、鉄板に。 横たえられた。 5人の。 骸に。 火を。 放つ。 「このままにしてたら、  食い物に、  されるから」 火は。 ゆっくりと、広がり。 視界を、真っ赤に染める。 ハヤオも、掃除屋も。 ただ。 眺めていた。 「どうして………」 ポツリ。 かき消えそうに。 なりながら。 ハヤオの耳に。 届いた。 「俺、守れると思ってた」 ハヤオの言葉も。 ポツリと。 足元に。 落ちるように。
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