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十二月二十四日  これでもかと主張してくるカレンダーの赤丸に心を踊らせた。浮き足立つのはおそらく私だけではないはずだ。この世の誰もが幸せになれる日。何かあっても、何もなくても、今夜は街から光が失せることはない。  先日買ったばかりの洋服に袖を通し、真っ白なコートを着込んだ私は鏡の前で彼へのプレゼントを抱き締めた。  寒がりで、でも面倒だからと防寒を怠る彼に、歪ながらも手作りで編んだ、彼にぴったりな深い青色のマフラー。  喜んでくれるかな。  考えれば考えるほど心が弾む。  彼とは十八時半に大きなツリーの下で待ち合わせだ。ライトアップされた街に、イルミネーションの光る並木道。そんな夜に彼としたいことは沢山ある。一緒にイルミネーションを見ながら歩いて、手を繋いで、キスをして。レストランでご飯を食べて、帰りにはケーキを買って、家に帰って二人でお祝いをしよう。キリストが生まれたこの日に、祝うのは彼の誕生ではなくて、今日という輝かしい思い出。  楽しみすぎてそわそわする。早く早く、時間が経ってしまえば良いのに。私は秒針が早く進んでくれないものかとじっと時計の針を見つめた。
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