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「ね、だって……。これ見て? 一生懸命マフラー作ったんだよ。寒がりだから……」
「そういうの。重いんだよ」
彼は溜め息混じりに、苛立たしげにそう言葉を吐き捨てた。衝撃が大きすぎて、何を話せばいいのか、どうやって彼を引き留めたらいいのか、どれくらい彼の事を好きなのか、伝える言葉が浮かばなかった。ただただ、彼の言葉に思考は停止して、感情の波に襲われた。今にも泣き出してしまいそうで、私は唇を噛んだ。
それなのにまだ、彼に良く思われたくて。
「……もっとちゃんと、理由、聞かせてくれない?」
引き攣った笑顔で、良い女ぶった。
声が震える。もう身も心も、冷たい。
「ごめん」
彼はただ、それしか言わなかった。
「そっ、か。そうだよね。私なんか……」
つりあわないよね。
心の中でそう呟いた瞬間、堪えきれなくて涙が溢れた。でも彼にばれないように私は咄嗟に俯いた。
うざいとか、面倒だとか。重い女だなんてこれ以上思われたくなんか、ない。
「ごめ、んね? ずっと私に、付き合わせてたのかな……」
私ばっかりが、好きだったのかな。
告白も、私からしたもんね。貴方はいつも、つまらなさそうだった。
「分かった。大丈夫だよ」
私なら、大丈夫……──。
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