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「な訳ないよーー……」
私は泣きじゃくりながら数十分前の自分を恨んだ。
最後の最後まで、彼のことが好きで、良い女振った結果がこれだ。自分でも本当に呆れる。
止めようと顔に力をいれても胸に押し寄せる感情に、喉につかえる苦しさに、やっぱり押し上げられて涙は溢れた。瞼をごしごしと擦りすぎて皮膚がチリチリと痛い。
身も心も寒いはずなのに、体の芯は燻るように熱くて。
しゃくりあげる度にもれる白い息に虚しさが増した。
もう一人なのだと、寂しさを痛感せずにはいられない。
会えない時間が私達を引き裂いたのか、それとも元から亀裂は入っていたのか。
彼のことが好きだったのに、それなりに長く付き合っていたのに、そんな簡単なことさえも分からない。これまで彼と過ごした月日は一体何だったのか。
考えても考えても答えになんて辿り着くはずもなく、その度に胸を抉るのは自分自身に向けられる容赦のない非難の言葉だった。
もうどれくらいの間こうしていたのかも分からない。
一人になりたいはずなのに足が動かない。
目の前を通り行く人々の目線をちらほらと集めながら、私はもう泣き止むことを諦めた。折角新しい服も買って、仕事も早く終わらせて、楽しむための計画だって立てたのに。
「絶対あり得ないよ。何してるんだろう、私……」
そう呟いた瞬間に、体の左側の空気が揺れた。
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