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「…敵は、本能寺にあり!!」
それは、戦国乱世を大きく揺るがす一大事件だった。そして、“彼”の運命が大きく左右される日でもあった。
時は、天正10年(1582年)6月21日、京(現在の京都府京都市)。
その都の一角に、「本能寺(ほんのうじ)」というお寺があり、そこに天下統一を目前としていた戦国武将、織田信長(おだのぶなが)ら織田軍が居住していた。
その日の朝、寺の外が何やら騒がしい事に気づいた織田軍兵士らは、寺の周りを何者かの軍団が取り囲んでいるのが分かった。
その軍団は、織田信長の家臣である明智光秀が指揮する1万を超える兵団。彼らは織田信長から中国統一を命じられ、中国地方へ進軍しているはずだった。しかし、なぜか彼らは本能寺の周囲を包囲している。まるで今にも攻撃してきそうな構えだ。
次の瞬間、光秀の軍らの大勢の弓兵らが、塀の外から本能寺に向かって、一斉に弓を放った。放たれた無数の弓矢の雨は、本能寺にいた100人余りしかいない織田軍兵らの大半に次々と命中した。突然の思わぬ事態に、織田軍らは混乱した。しかし、攻撃はこれで終わりではなかった。
弓矢の雨が一旦止んだかと思うと、休む暇もなく、今度は大勢の光秀軍らが本能寺に向かって一斉に突撃した。弓矢で負傷した織田軍らに次々とトドメをさしていった。それは、逃げ出す女中や子供にも容赦なかった。
本能寺の一室には、織田信長以外にも信長の妻である濃姫とその子供がいた。
「光秀が謀反!?」
濃姫は、側近の老婆や数人の女中や刀兵らから事の知らせを聞き、とても驚いた。
「はい…。もう既に大半の兵らが敗れました。本能寺の至る所から火の手も上がりました。おそらく、光秀軍らが火矢を放ったものかと…。」
「何と!! 光秀が…。なぜじゃ!?」
「分かりませぬ。…しかし姫様、今はそれを考えている場合ではありませぬ。事は一刻も争いますゆえ、直ちにお子様たちを連れて本能寺からお逃げ下さい!」
「…信長は!? 信長は何をしておる!?」
「…そ、それが、本能寺の中に居られるとは思いますが、行方が分からぬので御座います。」
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