第一話 織田信長、現代の伊豆下田へ

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 「あれ? 凛、いつも起きる時間遅いのに、今日は早いのね。どっか行くの?」  「ちょっと街までね~。」  「ふ~ん…。誰と?」  「ふっふ~ん、カ・レ・シ♪」  「えっ、彼氏がいるの? …って事は、もしかしてデート!?」  「うん♪ 大学生の瀧本(たきもと)君。」  「大学生って、どこで知り合ったのよ?」  「昨日の部活帰りにね、彼が道に迷っていたところ偶然通りかかった私に尋ねてきたの。そしたら話している内に意気投合しちゃって~! 彼は普段は東京の大学に通っているんだけど、この春休みに下田に旅行に来ていて、それで私が下田を案内することになったの。」  「へぇ~…。って昨日会ったばかりで、もう“彼氏”!? 早すぎない!?」  「それがお互い一目惚れ、って感じ~?」  「へ、へぇ~…。(最近の子は手順が早いのかな?)」  「お姉ちゃん、一足先にスイマセンね~。」  「えっ!? な、なにを、突然…」  「だってお姉ちゃん、もうすぐ20代半ばになろうとしているのに、まだ恋人も、デートすらした事がない残念なお人でしょ? 高校生で妹のアタシが先にできちゃって、何だか申し訳ないなぁ~、って思ってさ。」  「よ、余計なお世話よ! が、学生時代は勉強や部活に励んでいたし、今だって仕事が忙しくて、アンタみたいに恋するヒマなんかないんだから!!」  「その言い訳、もうウンザリなんだけど。」  「い、言い訳じゃないもん。じ、事実だし…。」  「まあ、そういう事だから。朝食が済んだら、下田駅まで車で送っていってね。…って言うか、なんか焦げ臭いよ?」  「えっ? …あっ!!」  見ると、フライパンの上で焼いていた朝食用の目玉焼き1人分が黒く焦げていた。凛と話していて、気が回らなかった。  「…だから、お姉ちゃんは恋人ができないんだよね。」  「うっさいわね!!(怒)」  「あ、その焦げた目玉焼きはお姉ちゃんがちゃんと食べてよね。勿体(もったい)ないから。」  「トホホホ…。」  伊織は、ションボリと肩を落とした。その後の朝食で、伊織は黒焦げの目玉焼きを半分涙目になりながらも、なんとか食べ終えた。
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