第一話 織田信長、現代の伊豆下田へ

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 「お姉ちゃん、早く、早く!! 待ち合わせの時間に遅れちゃうよ~!!」  朝食の片付けが終えた後、伊織と凛は荷物を持って慌てて玄関から外へと出てきた。玄関の戸締りを確認し、玄関の傍の車庫へと向かった。車庫には、5人乗りの普通の車が置かれている。それは伊織の車で、伊織が20歳になった時に5年ローンで購入した新車である。凛は助手席に、伊織は運転席に乗り込み、車庫を出た。  自宅から駅までは、車で県道を通って片道約10~15分程度の道のりだ。信号機の数は少ないが、そのかわり峠道を通っていく必要がある。と言っても道は狭くないので、それほど苦ではないが、自転車だと大変である。伊織と凛が中学生の頃、中学校がこの峠道を登り切った先にある為、毎日、自転車をこいで峠道を登って行ったものである。行きは汗をかくが、帰りは下り坂なので、スピードを出して下って行く時の風が涼しくて気持ち良い。この峠道を自転車だと片道15分くらい掛かって登りきるが、車だと5分も掛からない。そういう意味では、車は便利だ。  15分くらいで車は、伊豆急下田駅のロータリーに辿り着いた。そのロータリーに車を止めると、凛は車から降りた。伊織は車を停めたまま、助手席の窓を開けて、車の傍に立つ凛に声を掛けた。  「それで、そのデート相手の大学生は、どこにいるの?」  「このロータリーで待っているはずなんだけどな。」 と言いながら、凛はロータリーを見回した。  「あっ、いたいた!」  そう言って凛は誰かを見つけると大きく手を振った。凛が手を振っている方向を見て見ると、背が高くて黒髪のメガネを掛けた青年がいて、凛に向かって手を振りかえしていた。パッと見た感じでは爽やかで優しそうな好青年だ。  「じゃあ行ってくるね、お姉ちゃん。帰りのお迎え、ヨロピク~♪」 と伊織に言ったあと、凛はその青年に向かって走っていった。伊織は、その後ろ姿に向かって、今度は運転手側の窓を開けて顔を出して凛に言った。  「凛、あまりハメを外さないようにね。夕方頃に迎えに来るからね。」  凛は伊織に背を向けたまま手を振った。「ハイハイ、分かっていますよ」という事を、その手の振り方で表していた。
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