第一話 織田信長、現代の伊豆下田へ

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 一方その頃、濃姫がいる本堂すぐ近くの渡り廊下で、向かってくる大勢の敵兵らを次々と剣で斬り倒していく織田信長と、信長の傍でずっと守る小姓(こしょう)の森蘭丸(もりらんまる)がいた。  信長は襲撃を受けた直後、本能寺の本堂に寝泊りしており、蘭丸はその本堂の前の廊下でずっと控えていた。就寝していた信長は、襲撃の気配を感じ取って目を開けて床から出た。その気配は蘭丸も感じ取っていたようで、信長が蘭丸を呼んだ時には、信長の剣を手にして数秒も経たずに信長の前に現れていた。  信長が蘭丸から剣を受け取った直後、外の方で大きな銃撃と多くの矢が放たれた音そして多くの叫び声が聞こえた。すぐに見回り兵の1人が慌てた様子で信長たちの前にやって来た。  「て、敵襲です! 旗は水色桔梗(みずいろききょう)!!」  水色桔梗と聞いて、襲撃した人物が誰なのか信長たちはすぐに分かった。蘭丸は片膝をついて言った。  「敵は明智光秀の軍勢、謀反(むほん)です!!」  その蘭丸の報告を受けて、信長が言った。  「…是非も無し、か。」  直ちに信長は敵兵らを迎え討つよう指示した。その直後、本堂など至る所に火矢が放たれ、たちまち火の手が上がった。その火を見て、信長は蘭丸に言った。  「蘭、濃や子たちを探して今すぐ脱出させろ。」  「承知!!」  蘭はすぐに向かおうとしたが、もう既に信長と蘭丸の前後を大勢の敵兵らが取り囲んでいた。その敵兵らを次々と倒して今に至っている。信長たちの周りでも次第に炎が上がりはじめ勢いを増している。一刻も早く濃姫たちを探したいが、敵兵らは止むことなく襲い掛かってくる。それらを迎え討つのに精一杯だった。と、その時だった。  『どこじゃ、信長! どこにおる!!』  それは濃姫の叫び声だった。どうやら、思っていたよりもすぐ近くにいるようだ。その声は信長の勢いを更に強くさせた。所々で傷を受けながらも、圧倒的な強さで瞬く間に敵兵らを倒したのち、すぐにその声がした場所へ向かった。  その声は本堂からだった。信長と蘭丸はすぐに本堂に足を踏み入れた。  周囲が激しく燃え盛る本堂。その中央に信長に背を向けたまま茫然と立つ1人の女性。その女性こそ、信長が探していた濃姫だった。だが、濃姫の様子が少しおかしい。  「無事か、濃!」
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