第一話 織田信長、現代の伊豆下田へ

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 伊豆下田(いずしもだ)は、静岡県の伊豆半島の南端に位置する、人口2万人程度の小さな港町である。  市の面積の約8割以上が山林や原野で占め、急な山々と多くの砂浜や入り江、温泉地を有する伊豆を代表する観光名所の1つでもある。気候は比較的温暖で降水量も多め。四季を通じて様々な草花や果実が育ち、また金目鯛を中心とした豊富な海産物も水揚げされている。  1854年、この下田に突然アメリカから黒船に乗ったペリー提督が、鎖国状態だった日本の開国を求めて突然来航。下田市内の了泉寺(りょうせんじ)にて日米和親条約(※厳密には下田条約)が締結、その後はロシアと日露和親条約を下田市内の長楽寺にて調印を行うなど、日本を全世界に向けて開国した歴史ある町である。  その歴史を後世に伝え残す為、この伊豆下田では毎年5月第3金曜から第3日曜の3日間にかけて「黒船祭」を開催し、公式パレードやにぎわいコンサート、海上花火大会など数々の催し物を行い、多くの地元民や観光客を楽しませている。  伊豆下田は静岡県内で最も人口が少ない市で、人口減少に歯止めがかからない。高齢者世代が多く、若い世代の大半は地元の高校を卒業すると東京や神奈川など他所の地域へ出て行ってしまう。下田に仕事は少なく、他所に出て行った者達が中々戻ってくるのが難しい現状だ。  また、商業面や交通面も年々乏しくなっている。鉄道は私鉄の伊豆急行線が終点の伊豆急下田駅まで乗り入れており、その駅を中心に市内四方へ路線バスが走る。しかし鉄道も路線バスも人口減少や経営悪化などにより本数はそれほど多くない。路線バスも路線によっては1日1本というところや、路線廃止寸前といったところも幾つかある。道路は高速道路などの有料道路はなく、国道や県道はあるが海岸線を経由したり山間部を通ったり時間が掛かる道のりだ。
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