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十月二十三日の金曜日の夜、高校一年生である大鉄真鵬(おおがねまほう)は墓地にいた。しかしただの墓地ではない。学校近くにある、有名な外国人墓地である。
「お前やっぱりビビってるだろ」
「は!?ビビってないし!」
からかってくるクラスメイトに反論しつつも、正直ここに来たことを後悔していた。
ビビってないと強がったが、実際は懐中電灯を持つ右手が冷や汗でぐっしょり濡れている。
──俺の悪い癖だよな、ああいうの。
自分を責め、今日の昼休みでの会話を思い出していた。
昼休みにクラスの仲のいい男子数人で弁当を囲みながら、教室でごくごく普通の雑談をしていた。
昨日のバラエティ番組のこと、新刊が発売された漫画のこと、ここ最近流行っているバンドのこと。
それがいつしか時期が近いということからハロウィンの話になった。学校近くの大通りで大規模なハロウィンパレードが行われるだの、それに参加するだのしないだの、もし参加するならなにに仮装したいかなどなど。真鵬はハイクオリティな特殊メイクを施したゾンビになりたい、と話した。俺もそれやりたいな、と賛同してくれるクラスメイトたちもいて、それはそれで大いに盛り上がった。
ここまではよかったのだ。
なぜかそのあと話が横に逸れ、季節外れの怪談話になった。ハロウィンから幽霊に話がシフトしたからだが、そこで肝試しの話が始まった。
クラスメイトの一人、速水昭隆(はやみあきたか)曰く、学校近くの外国人墓地に夜な夜な幽霊が出るらしい。今では肝試し好きには有名な場所になりつつある、と興奮気味に語った。
するとよせばいいのに思いつきで話す船沢雄二(ふなさわゆうじ)がそこに肝試しに行こう、と言い始めた。
──おいおい、冗談じゃない。
真鵬は手遅れになる前に肝試しに反対しようとしたがそんな雰囲気ではなかった。あれよあれよという間に空気の流れは完全に行くことになっていた。
「真鵬ももちろん行くよな?」
本音を言うと行きたくなかった。墓地なんて肝試しを行うためのところじゃない。
「なに、もしかしてビビってんの?それなら来なくてもいいよ、ビビりちゃん」
けらけらと笑って馬鹿にしてくるクラスメイトたちに、真鵬は自分の気持ちと正反対のことを口にしていた。
「ビビってないよ。肝試し?行くよ、行く行く」
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