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「お前ら遅いよ。遅刻だぞ」
足音と声の主である四人のクラスメイトに言葉をかけると、「悪い悪い。新市(しんいち)が懐中電灯の電池がないっていうからコンビニ寄ってたんだ」と肝試しの言い出しっぺ、雄二が悪びれもなく言った。
「それならそれで一言連絡くれよ」
「だってまさか真鵬がちゃんと時間通り来るとは思わなかったし。肝試し、気合い充分だねえ」
「いや、別に……」
家にいていいなら買ったばかりのゲームをしていたかった。でも約束したからにはそれを守らないといけない。それに負けず嫌いな真鵬がここで引き返すわけがなかった。
「とっとと行ってとっとと帰ろう」
正門を背に墓地へ向かって足を踏み出す。枯れ始めた木から落ちた葉っぱが足元でかさりと音を立てた。
学校から墓地までは歩いて十五分ほどだ。途中にいくつか街灯はあるものの、夜道を照らすのには充分な明るさではなかった。夜に到底女性が一人で歩けるような道ではない。
外国人墓地は、この辺りに住む者なら誰でも知っている。
かつての日本で偉大な功績を残して没した外国人や、仕事で日本に来てそのまま日本で息を引き取った外国人、その他日本や日本付近の海などで人生を終えた外国人が眠っており、歴史的にも価値があった。しかしその多くが無縁仏で、手を合わせに来る遺族はほぼ皆無なのが現状だ。
墓地の門の前に着いた。
予想通り門の先は真っ暗で、懐中電灯で照らしても中はあまりよく見えない。さらには木々が茂っており、その影が不気味さを演出していた。風が吹くとその少し後に大きく揺れる木はまるで、墓地に来た者を追い払おうとしているようだった。
唸る風、しなる木々、深い闇。
どう考えても歓迎されていない。ここは興味本位で肝試しなんてやるところではない。
真鵬の本能がそう訴えかけていた。
このまま先に進めば、よからぬことが起きる。
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