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「門開かないから飛びこえちゃおうぜ」
他の四人は気にもせずにガチャガチャと音を立てながら門の横に連なる塀をのぼり、次々と越えていく。
止めようにも止められない空気の中で真鵬はひとつため息をつき、決心したように塀を飛び越えた。無事に着地すると、靴の裏に乾燥した芝生の感触があった。懐中電灯で足元を照らすも十五センチ先ほどまでしか見えない。
さすがにこの暗闇と静けさに不安を覚えたのか、クラスメイトたちは無言で歩き出した。
真鵬たち一行は前に三人、後ろに二人という陣形で歩いた。真鵬は後ろの二人のうちの一人だ。
「おい昭隆、どのへんに幽霊が出るのか知ってるんだろうな」
「あたりまえだろ。ここをまっすぐ行った先の大きな木の下だよ」
「道案内頼んだぞマジで」
前を歩く三人がそんな話をしたっきり、誰も口を開かなかった。
ギャアギャアと不気味な鳥の鳴き声が響き、バサバサバサッという、ただそれだけの翼の音が寿命を縮める。足元で小枝が折れる音も時おりするが、その音でさえ体をビクつかせた。
空は曇り、月は出ていない。夜の闇に染まった灰色の雲からはすぐにでも大粒の雨が落ちてきそうだった。
墓地の間を縫うようにして続いている小道は、その横に様々な形をした墓石が無尽に並んでいた。外国人墓地なだけにイメージが先行して十字架を模しているものばかりかと思いきや、横長の墓石やアーチ型の墓石、はたまたただ丸い墓石など、多種多様だった。
真鵬はみんなに悟られないようにビクビクしながら歩いていると、隣を歩く南雲俊太(なぐもしゅんた)が小さく震えているのに気が付いた。僅かではあったがカタカタと歯も鳴っている。
「大丈夫?」
真鵬が俊太の顔を覗き込むと、俊太は無理矢理笑顔を作り、「大丈夫だよこれぐらい」と返した。
俊太は人に流されやすく、頼まれたことは断れない、いわばパシリ気質を持つクラスメイトだった。今回も結局肝試しに行くことを断れずにここまで来たわけだが、実際はかなり怖いのだろう。
──なんなんだよ。こんななるならやめればいいじゃんか。
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