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「そうだよね、もったいないよね。もし今度チャンスが来たら今度こそ勇気を出して手術受けるね」
「そうだがんばれ、陽菜には俺が付いているからな」
亨の陽菜を励ますその声に陽菜は小さな声で礼を言う。
「うんありがとう」
この時陽菜は亨にちょっぴり勇気をもらった気がした。
「でもなんだかあたし複雑な気持ちなんだ」
「どういう事?」
不思議な表情で尋ねる亨に対し陽菜は呟くように続ける。
「あたしが移植をできるという事は誰かが亡くなってしまったという事でしょ? なんだか誰かが死ぬのを待っているみたいで素直に喜べないって言うか」
「何言っているのよ陽菜ったら、そんな事を言っていたらいつまでたっても移植なんてできないわよ」
そう叱咤したのは由佳であり、それに呟く様に返事をする陽菜。
「確かにそうなんだけどさ」
陽菜の一言に助言を与えたのは亨であった。
「こう考えてみたらどうだ? 誰かの命が失われたことでその人の心臓は陽菜に移殖されたとしても、そうする事で陽菜の体の中でその人は生き続ける。そう思わないか?」
「そうなのかな?」
「そうだよきっと」
次の瞬間、由佳が陽菜に申し訳なさそうに声をかける。
「ごめんね陽菜、千夏ちゃんに長居は禁物って言われているからそろそろ帰らないと」
「えぇーまだ良いじゃないもう少し居させてよ」
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