【第三章】『陽菜が触れた大きな心』

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「ううん良いの、テレビカードもただじゃないんだからなるべくお金かからないようにしなきゃ。たまにこうやって本を買ってきてくれるだけで良いの。それに本読むのも想像力膨らんで楽しいのよ、好きな時に何度も楽しめるしね」 この時の陽菜は楽しそうに語っていた。 「遠慮しなくていいのに。じゃあ読み終わった本で家に持って帰る物はある?」 「今回は良いかな? そんな事より聞いてよママ」 すごく興奮気味に話す陽菜に一体何だろうと疑問に思った陽子であったが、この様子から悪い事ではないなと感じ取る事が出来た。 「少し落ち着きなさい、一体どうしたというの?」 「こんなこと落ち着いていられないわよ」 「だからどうしたというの」 「ママさぁ、あたしが小さい頃よく遊んでもらっていた隣の家に住んでいた亨兄ちゃん覚えている?」 「あぁ亨君ね、良く覚えているわよ。確かお父さんの仕事の都合で引っ越しちゃったのよね、今頃どこにいるんだろうね」 「ほんとどこにいるんだろうね」 不敵な笑みを浮かべてみせる陽菜に対し、一体なんだろうと不思議に思う陽子。 「なんなのよ、何か知っているような言いぐさね」 「亨兄ちゃんね、今この病院にいまぁす」 陽菜のおどけた様子で言うその言葉に陽子は驚いてしまった。 「どういう事?」 「ママ歌手の翔って知っている?」
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